カナダ最高裁 芝生用農薬使用の禁止を認める
情報源:Reuters Daily World Environment News 06/29/01 【オタワ】 環境派の人々がカナダ人の健康にとって”大いなる前進”であると絶賛する画期的な判決が、カナダ最高裁により昨日、下された。カナダ中の自治体は居住用の農薬使用を禁止することができるというものである。 緑豊かなモントリオール近郊のハドソン市(フランス語圏であるケベック州)は、1991年にカナダで最初に芝生用農薬の使用を禁止した自治体であるが、この禁止は合法であると最高裁が判断を下した。 さらに重要なことは、ハドソン市が禁止を実施するに際に準拠したケベック州の法律は、カナダの他の多くの諸州の法律と非常に類似していると最高裁が述べたことであり、このことは、カナダ中の自治体に対しこの判例に従う権利を与えたことを意味する。 「私たちは大変、感動している。カナダ中の多くの自治体がこの判決を待ち望んでいた」と環境団体であるカナダ・シェラ・クラブの農薬削減キャンペーンのリーダであるアンジェラ・リックマンは述べた。「これにより数多くの自治体は、財政的な圧迫を心配せずに、農薬禁止を進めることができる。これはカナダ人の健康にとって大いなる前進である」と彼女はロイターに語った。 ハリファックス、ノバ・スコチアを始めとするケベック州の36都市が1991年以来、同様な禁止令を制定した。 農薬反対者たちは、農薬は子ども達の脳や神経系の発達に影響を与え、ホルモンの働きに変調をきたし、また家庭のペットにも有害であると述べている。 これに対し園芸業者達は、農薬の適切な使用は許されるべきだとして異を唱えていた。ケベック州の芝生管理会社2社は、ハドソン市が連邦政府と州当局により承認されている化学物質の使用を禁ずるのは違法である主張して、最高裁に上告した。 これに対し、最高裁は全員一致で「我々の全ての将来と全ての自治体の将来は健康な環境にかかっている」としてその訴えを退け、「自治体当局は市民生活に最も近い所におり、市民の必要としていることに対し最も敏感である」と付け加えた。 「農薬について、どうしても必要な使用と必ずしも必要でない使用を区別することにより、有害な農薬の使用を最小限にし、住民の健康を促進することを市の条例が目指すのは、理にかなっている」と判決は述べている。 1991年のハドソン市条例は農場には適用されず、またゴルフ場には5年間の猶予期間を与えた。 裁判の主役である芝生管理会社2社の担当者は、最高裁の判決を検討中であるが、禁止令は差別であると主張した。 「全産業界は、ハドソン市の芝生管理会社をターゲットとしたこの差別的な市条例と戦うために、共同で努力を結集している」とサービス社とチューダン社の2社はロイターへのFAX文書で述べた。 両社は、この裁判は一地方の出来事についてのものであり、最高裁のこの判決が他の州に適用されるべきではないとしている。 判決では、ケベック州の法律は、オンタリオ、アルバータ、ブリティッシュ・コロンビアなど有力諸州やノバ・スコチア、ニュー・ブランスウィック、マノトバの諸州及び北極圏の3つ統治領の内の2つの法律と極めて類似していると言及している。 リックマンは「カナダの農薬使用に関する法律は時代遅れのものとなっており、早急に改正の必要がある」と述べている。 「この判決により、農薬使用による健康と環境への影響についての世間の関心が高まった。今日に至るまで、多くのカナダ人は、政府が使用を認めているのだから、農薬は安全だと信じている。多くの人々は農薬に添付されている警告表示を読んでいない」と彼女は述べている。 (デビッド・リュングレン) (訳:安間 武) |